荒木陽子全愛情集

アラーキーの妻、荒木陽子の深い「愛」と豊かな「情」が、この一冊にこめられる。

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「私を写真家にしてくれたのはヨーコだった」とアラーキー。1990年42歳で亡くなった荒木陽子は、写真家・荒木経惟の妻であると同時に、天才写真家の創作の源泉であり続けた。またエッセイストとして活躍、軽妙な文体で日常生活や旅行記をつづりながら、人の心の機微をとらえ、夫への愛、人生の歓びをのびやかに表現した。 荒木陽子が発表したエッセイ、小説などすべての執筆作品を集め、この類いまれな女性の感性と思考をあまねく堪能する。

  • 仕様=四六判正寸/並製本/カバー装/口絵+本文784頁
  • ブックデザイン=祖父江慎+福島よし恵(コズフィッシュ)
  • 定価=5000円(本体価格・税別)
  • ●エッセイ、小説など、全執筆作品を収録した初めての著作集。単行本未収録作品を含む。
  • ●荒木経惟による荒木陽子のポートレイト15点とあとがきを収録。
  • ●解説は堀江敏幸(作家・早稲田大学教授)による「ズブズブの現在を生きる──荒木陽子のために」。
  • ●巻末に、年譜、解題、著作目録を収録。
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物思いに沈んでいる表情が良い、と言ってくれた。私はその言葉にびっくりして、じっと彼を見詰めていたような気がする。
その時までの私の世界は、きっと、原色だったろう。けれど、その原色は渋いニュアンスのある色に変わろうとしていた。一人の男の出現によって、季節がはっきりと区切られていくのを、秘かに自分の心の中に感じていた。私、 20才、彼、27才。冬の終わり頃だった。
(『わが愛、陽子』より/1978)

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「いいよ。どこへでも連れて行ってやるよ。でも旅が楽しいのはオレと一緒に行くからなんだよ」
ふーん、そーかもしれないなー。センチメンタル・ジャーニーの相棒、アラーキー氏がいない私なんてザンパノに捨てられたジェルソミーナみたいなもんで(ちょっと例が変だけど)、やっぱりピエロの扮装してトランペット吹きながら、怪力鎖切り男ザンパノ・アラーキーと一緒に、いろんな街々をさまよい歩きたいのだ。
(10年目のセンチメンタルな旅/1982)

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急に彼はカメラをドタリとそこらに置き去りにして、またもや私の方にのしかかって来る。気分の転換が早いというのか、彼の中では写真と性行為はセットになっているというのか(多分後者であると思うが)、とにかく目まぐるしいのである。しかし、はっきり言って、私はこーゆーのは好みである。
(ノスタルジアの夜/1984)