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港のひと
港のひと・002・創刊2号
2002年5月20日発行
008◆自著を語る『日本語学叢考』-鈴木 博
  私は滋賀大学教授時代に、教育学部附属養護学校長を二年間、併任した。大津市平津の教育学部からは北方の、唐崎の近くにある養護学校までは約十三キロある。教育学部での講義や卒業論文の指導などをしながら、一方では養護学校(小学部・中学部・高等部)の責任者として、養護児童生徒たちの抱える諸問題の解決に尽くす教職員の力に少しでもなれるように奮闘したが、任期二年の終了間際に、神経の使い過ぎから体に異変が続き三週間ほど入院した。種々の検査の結果、膵炎という診断を医者から告げられた時、 本当は膵癌ではないかと、ちょっと疑い、もしそうならば余命のあるうちに、研究書を出したいと痛切に願った。慢性膵炎という病名を貰って退院し、外来での検査・服薬を続けながら、幸いに、念願の書『室町時代語論考』を八カ月後の昭和五十九年十一月末に刊行することができた。
 その校正刷を恩師土井忠先生に捧呈し、序文をお願いしたのであったが、土井先生は丁寧に読んでくださって身に余る御序を頂戴する幸せに浴した。その玉稿が届けられ拝読していて感涙にむせんだ。
 本が出来上がって、多くのかたがたにご覧いただいたが、東京からお二人のかた、すなわち出身大学の異なるK氏とS氏とから、それぞれにお電話を頂戴し、異口同音のような「実に羨ましい。自分には、もはやこのような序文を戴く恩師はおいでにならない」という、羨望に満ちたご感想を頂いた。
 この度のささやかな拙著『日本語学叢考』の「あとがき」に、国語学への本道へお導きくださった土井先生に対する仰慕の気持ちの一端を記したが、私は専任として勤務した滋賀大学で、さらに定年退官後の大谷女子大学で、そして今は非常勤先の大谷大学で、学生指導の方法に自然と土井先生流を模していることに気づく。この拙著には、卒業論文以来のカナ抄の研究に関するもののほかに、本書の「はしがき」において、所収の各論稿に対する自注の中で記しているように、
 学生諸君に講義して来たことなども一部加筆して収めた。
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