書評『日本橋總覧』

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『日本橋總覧』
小林春吉、牧太郎(解説)
A5判/上製本/糸かがり/函入/口絵写真92頁/本文632頁
8,000円(本体価格・税別)
  ISBN4-89629-0196-4 C0030

1999年1月3日/神奈川新聞『ぶんかびと』
 戦前、日本橋問屋街に今もある新道通り(横山町と馬喰町の間)に事務所をかまえ、「日本魁新聞」が発刊されていた。この新聞社が昭和十四年五月に発刊した『日本橋総覧』という本が、創刊者(小林春吉氏)の子息によって復刻出版された。
 日本魁新聞社は集一回ぐらいの間隔で発刊されていたらしいが現物は見当たらない。
 復刻した人は毎日新聞編集委員の牧太郎氏。矢田区長とは記者時代からの仲間で、中央区に関係する刊行物ということもあって、十日に区役所を訪れ寄贈した。
 牧氏が父親の刊行物を復刻出版するに至ったいきさつについては、巻末に感動的な文章でしためられている。実父の存在を知り、その行方を探しあて、自らが選んだ報道人であったことを知ったときの感動、父親への言い知れぬ愛情を淡々を書きしるす。
 考えまいとしていた父にこみあげる情愛をおぼえるのは過労がたたり脳卒中で倒れたのち。会いたい気持ちで縁者を探し、その中で日本橋総覧を知って自費で復刻版の発刊に夢中となる。親子のえにしに導かれた自然な行為であったのかもしれない。
 父親、小林春吉という人は一晩にビール二ダースも飲む大酒飲みだった。父親という人間を牧氏は「彼が目ざしたのは、反権的で、酒好きで、世話好きで、豪放磊落な格好の悪いオラウータンみたいな想像上の動物みたいだったのかも知れない」と、情ぶかく想像している。
 日本橋総覧は当時の日本橋区を多面的に紹介していて、特に町や店、風俗から行政分野にいたるまで細かに分析し最高級の資料である。
 折しも名橋日本橋八十八周年と時期がかさなり牧氏は「これで供養ができました」と感慨を語っている。

 
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