『法廷通訳人 裁判所で日本語と韓国語のあいだを行き来する』
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■本文より
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「裁判所で通訳をする」と、ひと言で言ってしまうことは、とてもたやすい。だが、それはいったいどういうことなのか。
 なぜ私は、裁判所から連絡が来ると待ってましたとばかり即座に通訳を引き受け、法廷に立つのだろう。
 裁判所や、裁判手続きということ。いろいろな法曹関係者や被告人たち。劇場で見るような、怒り、涙、かけひき、ため息と、飛びかう法律用語。適切な訳語への迷い。目線のやり場、呼吸の仕方にこまってしまう一瞬。でこぼこの韓国語、そして母語である日本語までもが試される怖さ。それらは時としてズレたり歪んだり、どうかすると鋭い刃物のように私を突いてくる。
 法廷通訳人は最初に宣誓書を朗読して、目に見えない〈良心〉と〈誠実〉を担保にしなければならない。そして日本語ともうひとつの言語を使いながら、被告人やさまざまな法曹関係者、事件の関係者、傍聴人などと時間を共にしていく。非日常の空間の中で、普段の生活ではなかなか見えない人間の姿があぶり出される光景を目の当たりにすることもある。
 そこにあるのは言葉だ。
 言葉には、それを使う人の人となりや個人史、生き様が反映される。日本語であれ韓国語であれ、放たれる言葉によってその人の〈生〉が鮮やかに浮かび上がることがある。もちろん法廷通訳人の言葉も例外ではあり得ない。
 裁判所という公開の場で、自分をさらけ出す場に立つ覚悟を試されながら、私はふたつの言葉のあいだを行き来している。

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■目次
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はじめに
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法廷通訳という仕事
法廷通訳人になる
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そこに立たされる人生
わたし、通訳いりません
だれがそれを、きめたんだ
アナタ、モウ、イイ
父と子の母語
もどかしさの衣
五〇二号室にて
クロッスムニダ
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日本語と韓国語のあいだを行き来する
判決重うなったんは、あんたのせいや
名前を何といいますか
ハスリします
うごくなまえたち
ルビのかけひき
揺れるポニーテール
バーの向こう
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裁判員裁判の法廷にて
初めての裁判員裁判
耳慣れない単語
一本の電話
教科書のない始まり
背中を見ながら
ありがとう(エピローグ)
おわりに
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