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『ロケットの正午を待っている』
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■「スロースロップを追いかけて」本文より
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 作家や作中の登場人物になりきり、物語の舞台を謙虚に訪ね歩くこと。それが文学探訪にある「奥ゆかしさ」の由来であるとするならば、探訪の「優雅さ」とはきっと、歴史の闇に潜まざるを得なかった存在を、誰かの空想の産物にすぎない物語の力をかりて、じんわりと、自分たちの生きる世界に息づかせてみたいと願う、そんな文化的ゆとりにこそ由来するのかもしれない――。
 そう、『重力の虹』という文学作品のディテールを求めてこの地を訪れた私は、気がつけばいつだって、物語の中のスロースロップのことばかりを思っていた。怠け者で、女好きで、旅を続ければ続けるほど自分というものを失っていくスロースロップ。彼は、歴史を目撃しながらも、歴史に記憶されることのない、どこまでも匿名的な存在であった。そのあきれるほどに凡庸で牧歌的なたたずまいは、実のところ、歴史的悲劇の地を訪ねつつも、素朴なまでに文学の力を信じている、私自身の立ち姿にも重なってくる。
 『重力の虹』をめぐるドイツの旅。紛れもなくそれは、私にとっての文学探訪であった。

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■目次
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スロースロップを追いかけて
物語を産みつける
分からなさを描くこと
ヒーローなき時代の英雄譚
メタネズミは語る
極限状態のからだ
男たちのモラル・ジレンマ
ロケットの正午を待っている
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