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『佛語箋 研究・索引・影印』
本書の詳細

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■本書「あとがき」より
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「日本の近代化は文字との戦いに始まった」とは、飛田先生の「近代日本語と漢字」(1988)の冒頭の文章である。佛語箋などの「~箋」の単語集は近代の黎明期に日本語の文字や言葉の文化が変化していく過程の証でもあると自らも考え、索引作成によって、洋語を取り入れていくその道筋を辿る機会が与えられたことを幸いに思った。
 実際の、和綴じの版本は日本語フランス語それぞれの古い字体で記され、訳語や綴りの誤りもあり、判読が難しい語もある。しかし、「ミガルノアシガル 軽装騎兵」は、Chevau-léger、「ハヲリ 短掛」はManteau、「ナガモモシキ 長袴」はPantalonなどの表現があり、「ヤジリキリ 鑚倉」はFilon*(filou)、「ハナノシヤウジ 鼻孔隔」は Etre deux-des narinenes*(entre les deux narines)等の、見慣れない語もあり、興味をそそられた。鎖国政策の影響からかキリスト教関係の語は、例えば「ヲタマヤ 廟堂」はChappelle*(chapelle 礼拝堂) 、「テンダウ 天堂」はPurgatoire(煉獄)などと記されている。中にはフランス語の古語も多く、英語や蘭語風の綴りもある。また日本語の語順で記した一種の造語があり、「イイビツ 飯桶 Riz boite*(boîte à riz)」などのようにフランスにはない事物を何とかフランス語で記そうとの苦心の跡も見える。幕末のことばが西欧文化を吸収していく過程がさまざまな問題を含みながらも如実に示されている。
 士族の一人であり画家でもある著者の加藤雷洲については、序文もないために不明な点があり、『佛語箋』には村上英俊の『三語便覧』の中の語をそのまま継承している語が多く見られ、綴りや訳語に誤りもある。しかし、仏和辞書も和仏辞書もなく、おそらくは蘭仏辞書が頼りであった時代である。雷洲はフランス語を文化とともに摂取しようとして、江戸時代後期の日本語と漢語と蘭語、そして本草学の知識を生かし、一般の人向けに3174語の和仏単語集にまとめあげている。その並々ならぬ努力の結晶は、150年余を経て今一度評価される価値があると思われる。

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■目次
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監修のことば  飛田良文
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『佛語箋』研究
はじめに
1 『佛語箋』以前のフランス語単語集と加藤雷洲
 1-1 フランス語単語集 とその時代
 1-2 編者・加藤雷洲
2 『佛語箋』の書誌と所蔵状況
 2-1 『佛語箋』の書誌
 2-2 『佛語箋』の所蔵機関
 2-3 『佛語箋』の所蔵形態
2 『佛語箋』の書誌と所蔵状況
 2-1 『佛語箋』の書誌
 2-2 『佛語箋』の所蔵機関
 2-3 『佛語箋』の所蔵形態
3 発行書林と刊行年
 3-1 発行書林
 3-2 『佛語箋』の刊行年
4 『佛語箋』・『三語便覧』の関係
 4-1 部門の立て方
 4-2 各部門の語数比較
 4-3 両書における表記一致語
5 『佛語箋』・『三語便覧』の表記比較
 5-1 振り仮名表記の比較
 5-2 漢字表記の比較
 5-3 フランス語表記の比較
6 『佛語箋』の編集過程
 6-1 編集作業(1)―表記変更
 6-2 編集作業(2)―増補語192語
 6-3 増補語資料と編集の経緯
7 『佛語箋』と出版事情
 7-1  『佛語箋』出版とその事情 
 7-2 出版元と関連事情
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『佛語箋』索引
凡例
『佛語箋』日本語索引
『佛語箋』フランス語索引
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『佛語箋』影印
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あとがき
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