『歩く 増補改訂版』
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■本文「かぶきの心と美」より
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「かぶき」は、江戸時代の庶民が創り上げた芸術である。
「かぶき」という言葉は、今日、伝統舞台芸術である演劇の名称でしか使われていないが、かぶきの興った、桃山・江戸の初期十六世紀の頃には、日常語として、
「いざや、かぶかん」とか「かぶき人」などというように一般語として使用されていたのである。
本来「傾(かぶ)き」のことで「傾奇(かぶき)」とも記した。
今日の言葉に置きかえるなら「新傾向」「前衛」というところかとおもう。
だから「かぶき芝居」といえば、前衛劇ということであった。
その演劇が成熟したときに、「歌舞伎」という字を当てたのである。
しかも江戸時代は「歌舞妓」と書いたので、かぶきという演劇は、
歌と舞と伎(わざ)とで出来ているからだというのは、近代のこじ付けにすぎない。
「かぶき」の精神とするところは、旧体制や旧習の日常性に対して抵抗する意味であった。
かぶきが近代の黎明期とその発生をともにしたことは、戦乱の暗雲に閉ざされていた中世を脱して、新しい世を先取りしたことに由来する。
中世の暗い「憂き世」を、明るい「浮き世」に転じたのである。
「かぶき」は、戦後の民衆が求めた「夢の浮世をいざ狂へ」という
刹那主義の象徴として始まるといっていい。……

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■目次
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グンジのびっくり桶
舞台は
俳優
演劇
再び俳優について
セリフについて
表現について
変身の価値
初心ということ
「切れ」と「立ち上り」
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来る日も「歩く」
かぶきの心と美
わたしにとって「パフォーミング・アーツ」とは
来る日も「歩く」
「青森のキリスト」断想
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かぶき考(注、今回、増補した5本のエッセイ)
江戸の発想
かぶきと能の変身・変化
かぶき演出のなかの儀礼
見せるものではない盆踊
ある秋の日の対話(インタビュー)
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イメージ・スクリプト 台本 歩く
台本 原始かぶき 青森のキリスト
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帚木抄 自平成九年一月─至十年二月
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