『散文詩集 鬼火』
本書の詳細

戻る
■本詩集「或る断片」より
spacer

 上野の博物館には大変広い庭がある。秋の一日、展観を見てしまつてからその庭の中の植込の芝生の上に寝転びながら、午後の秋空を見上げたりして私はよく、鬱を晴らしたりしたものだつた。
色紙の青の空
浮んでゐる雲は白――
あゝ、見える見えてくる
こんなに沢山のものが――
 博物館の建物の手前のところに、大きな銀杏の樹が一本立つてゐる。黄色く色も変り、数も少なくなつた葉が、青く澄んだ空に吸ひ込まれてゐるかのやうに、一つ一つひらめいてゐた。
 ――俺の悲しい舌のやうだ――
 そして、吹きくる風に私の心の樹も同じやうにひらめいてくる。
 あゝ、俺の心の樹がひらめいてくるのもあの銀杏の樹のやうに大分枯れてしまつたからだ、葉を大分切り落としてしまつたからだ……

spacer
 
■目次
spacer
或る断片
十二枚の版画
手回しオルゴール
夜光
屋根の上の白い鳥
指先から夕暮の大気に
空の水脈
地図記号
秋の午前
セザンヌの絵の腕
漁火
幻の雪
道に就いての断章
一つの遠景
spacer
二十四枚の口絵
遠吠え
池之端の自画像
蜘蛛の巣
鴨川に沿つて
初夏のたそがれ
時雨
寺にて歌へる
カンタアビレ
湯島天神
秋水
脳髄
湖上
山の蟬
夢の後で
夕暮時に遠ざかるもの
ちぎれ雲が見た私
風鈴
閉花
神社の石段
五月の歌
雨垂れの正確
花火
元日の風
spacer
言葉の為の三つの小品
輪郭
雪の朝の道
spacer
あとがき ― 回顧四十年
spacer
HOME刊行書籍一覧散文詩集 鬼火|本書の詳細|

図書出版・編集企画
港の人(みなとのひと:minato-no-hito)
〒248-0014 神奈川県鎌倉市由比ガ浜3-11-49・phone: 0467(60)1374・fAX: 0467(60)1375